NPSは「顧客が他人に薦めたいか」を数値化する、経営に直結するロイヤルティ指標です。本稿では定義・計算式から、CS(顧客満足度)との違い、調査設計の要点、活用上の注意点まで、実務に効く視点で網羅します。

最終更新:2025-11-04|CXコンサルティング合同会社
 

NPS(ネット・プロモーター・スコア)とは?

NPSの定義と背景

NPS(Net Promoter Score/ネット・プロモーター・スコア)は、顧客が「この商品・サービスを友人や同僚にどのくらい勧めたいか?」を0〜10点で評価し、結果をもとに顧客ロイヤルティを数値化する指標です。2003年、Bain & Company のフレデリック・ライクヘルド氏が発表したHBR論文「The One Number You Need to Grow」で提唱され、世界の主要企業が採用しています。

推奨者(9〜10点)/中立者(7〜8点)/批判者(0〜6点)に分類し、ブランドの「ファン構成比」を把握できます。

NPSが注目される理由

NPSは、単なる“満足”ではなく将来の行動意向(推奨・再購入)を捉えるため、成長や収益の先行指標として評価されています。Bainの研究は、NPSが高い企業ほど有機的成長率が高い傾向を示すと報告しています。口コミ経済・SNS時代において、NPSは「信頼」を可視化するリアルタイム指標です。

宿泊・サブスクなど体験型ビジネスでは、チェックアウト直後や利用直後にNPSを取得し、推奨者の増幅と批判者の改善対応を自動化すると効果的です。

NPSの計算方法とスコアの意味

推奨者・中立者・批判者の分類

設問例:「あなたは、この商品・サービスを家族や友人にどのくらいおすすめしたいと思いますか?」(0=まったく思わない〜10=非常に思う)

区分 点数範囲 特徴 行動傾向
推奨者 9〜10 熱心なファン 口コミ・再購入・紹介
中立者 7〜8 満足だが熱意は低い 他社に流れやすい
批判者 0〜6 不満・離反リスク 悪評・離反の可能性

キャプション:推奨者・中立者・批判者の三分類

NPSスコアの算出式(例付き)

NPS = 推奨者% − 批判者%。例:推奨者60%・中立者25%・批判者15% → NPS=+45。スコアは−100〜+100の範囲を取ります。

スコアの読み解き方と目安

  • 0以上:推薦構造が成立
  • +30以上:ファン化が進行
  • +50以上:優良ブランドの象徴

重要なのは絶対値よりトレンドと適切な比較軸。国民性や業界特性により基準は変わるため、「自社の経年推移」と「同条件ベンチマーク」を併用します。

NPSと顧客満足度(CS)の違い

「満足しているのに離反する」理由

CSは“今の満足度”を測るのに対し、NPSは“他人に薦めたいという将来の行動意向”を測ります。離反直前に「満足」と回答する例が多いのは、満足=推奨ではないためです。

CSでは測れない“推奨意向”の重要性

比較項目 CS(顧客満足度) NPS
測定対象 現在の満足度 将来の推奨・行動意向
設問 満足していますか? 友人・家族に薦めたいですか?
主目的 品質把握・是正 ロイヤルティ把握・成長予測

NPSとCSを組み合わせると見える「真の顧客理解」

理想は併用。CSで「何が良い/悪い」を、NPSで「なぜ推奨する/しないか」を把握し、現場改善とブランド戦略を接続します。

NPS調査の設計と実施ポイント

リレーショナルNPSとトランザクションNPSの違い

  • リレーショナルNPS(rNPS):年1〜2回、ブランド全体の関係性を定点観測
  • トランザクションNPS(tNPS):接点直後(宿泊・問合せ・配送など)に体験を即時評価

両者を並行運用し、「体験品質 → ブランド愛着」の連鎖を数値で確認します。

設問設計の注意点と文言の統一

  • 核心設問は一貫した文言で継続(文言変更はトレンド断絶の原因)
  • 自由回答は十分量を確保(テキストマイニング前提)
  • 属性・利用状況・チャネルなどの併設設問で原因追跡を可能に

調査タイミングとサンプリング設計

  • 体験直後は回答率・感度が高い(tNPS)
  • rNPSは母集団の偏り(ヘビーユーザー偏重等)を補正
  • リピート周期の長い業種(宿泊など)は成果反映にタイムラグが出やすい

NPSを正しく活かすための注意点

日本人特有の中間回答傾向への対応

日本では中庸志向により7〜8点が選ばれやすく、欧米比較でスコアが低く出る傾向があります。評価は変化率・構成比・長期トレンドを重視しましょう。

ベンチマーク比較の落とし穴

顧客層・価格帯・体験軸が異なる比較は誤解を招きます。同条件での比較に加え、自社の経年変化を主軸に。

数字ではなく「顧客の声」に向き合う姿勢

スコアだけでは因果が見えません。自由回答をテーマ別に分類し、何が推奨を生み、何が離反を招くかを可視化。推奨者の声=強み、批判者の声=改善機会です。

まとめ:NPSは顧客ロイヤルティ経営の羅針盤

定期測定と改善のサイクルを回す

  1. 測定:定期的にNPSを取得
  2. 分析:スコア×コメントで洞察化
  3. 改善:推奨者を増やす施策を実装
  4. 再測定:成果検証と標準化

顧客の声を成長戦略へつなげる方法

  • 推奨者の声→ブランドの核を特定し訴求
  • 中立者の声→次の推奨者候補として育成
  • 批判者の声→欠陥早期発見と是正

ロイヤルティ経営は“人の感情”を軸に進化する

NPS(顧客の推奨意向)・eNPS(従業員の推奨意向)・BX(ブランド共感)を連動させ、信頼資産を積み上げる体制へ。

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