tNPS(トランザクションNPS)とは?rNPSとの違いと使い分けをわかりやすく解説

NPS®調査を始めようと調べていると、「tNPS」「rNPS」という2つの言葉に出会って手が止まる——そんな方は少なくありません。

実はこの2つ、測っているものも、聞くタイミングも、活かし方もまったく別物です。区別せずに運用すると、「スコアは取れているのに、何を改善すればいいのか分からない」という状態に陥ります。

この記事では、NPS調査を支援してきたコンサルタントが以下を解説します。

  • tNPS・rNPSそれぞれの意味と質問例
  • 2つの違いが一目で分かる比較表
  • どちらから始めるべきか?使い分けの考え方
  • 併用する場合の年間スケジュール例

※NPSそのものの基本(計算方法・顧客満足度との違い)は、NPS®とは?意味・計算方法・顧客満足度との違いで詳しく解説しています。

tNPS(トランザクションNPS)とは?

定義:「体験の直後」に聞くNPS

tNPS(Transactional NPS/トランザクションNPS)は、特定の体験(トランザクション=取引・接点)の直後に実施するNPS調査です。宿泊のチェックアウト直後、問い合わせ対応の直後、商品配送の直後など、「今の体験」を評価してもらいます。

質問例

「今回のご宿泊の体験をふまえて、当館を友人やご家族にどのくらいおすすめしたいと思いますか?」(0〜10点)

ポイントは「今回の」という限定です。ブランド全体の印象ではなく、直近の1回の体験に焦点を当てます。

tNPSの特徴

  • 記憶が新しいため、回答率と回答の精度が高い
  • 「どの接点に問題があるか」をピンポイントで特定できる
  • 批判者(低い点をつけた方)に即日フォローでき、悪いクチコミを未然に防げる
  • 現場スタッフの改善活動に直結しやすい

rNPSとは?

定義:「ブランドとの関係全体」を聞くNPS

rNPS(Relational NPS/リレーショナルNPS)は、特定の体験から離れたタイミングで、企業やブランドとの関係全体を評価してもらうNPS調査です。年1〜2回など、定期的に実施します。

質問例

「当館(当社)を友人やご家族にどのくらいおすすめしたいと思いますか?」(0〜10点)

「今回の」がつかない点にご注目ください。過去の体験すべてを含めた、ブランドへの愛着や信頼の総量を測ります。

rNPSの特徴

  • 企業全体の「ファンの割合」を定点観測できる
  • 経営指標として業績・成長性との関連を追いやすい
  • 競合との比較(ベンチマーク)に使いやすい
  • ただし「どの体験が原因か」までは分からない

tNPSとrNPSの違いが一目で分かる比較表

比較項目 tNPS rNPS
測るもの 直近1回の体験の質 ブランドとの関係全体
質問の焦点 「今回の体験」を薦めたいか 「この会社・ブランド」を薦めたいか
タイミング 体験直後(チェックアウト時など) 定期(年1〜2回)
対象者 その体験をした顧客 顧客全体(休眠客も含む)
主な使い手 現場・カスタマーサポート 経営層・マーケティング
活かし方 接点ごとの改善・批判者への即時フォロー 経営指標・ブランド戦略・競合比較
例えるなら 毎日の体温測定 年1回の健康診断

「毎日の体温測定(tNPS)」と「年1回の健康診断(rNPS)」の関係と覚えると、混同しなくなります。

どちらから始めるべきか?使い分けの考え方

迷ったら tNPS から

これからNPSを始める中小規模の事業者様には、tNPSからのスタートをおすすめしています。理由は3つあります。

  1. 改善アクションに直結する——「朝食会場の混雑」「チェックインの待ち時間」など、原因が特定できるため翌日から動けます
  2. 回答が集まりやすい——体験直後は回答率が高く、少ない客数でも分析に足るデータになります
  3. 効果が早く見える——接点単位のスコアは改善の成果が数週間で表れ、現場のモチベーションになります

rNPSは対象者リスト(顧客全体)の整備が必要で、スコアが動くのも年単位です。体制が整ってから追加する方が挫折しません。

宿泊施設での実例

代表が過去に勤務していたホテルでは、チェックアウト直後のtNPS調査で「お客様の声」を集め、全従業員で共有して改善を繰り返しました。その結果、じゃらんのクチコミ評価が半年で★3.7から★4.3まで向上しています。まず接点の体験を磨き(tNPS)、その積み重ねがブランドへの愛着(rNPS)に育つ——この順番が王道です。

併用する場合の年間スケジュール例

両方を運用する場合の、宿泊施設を例にした設計例です。

時期 調査 内容
毎日 tNPS チェックアウト時にQRコードで回答依頼。批判者には当日中にフォロー
毎月 tNPS集計 接点別スコアを全スタッフで共有し、改善テーマを1つ決める
6月・12月 rNPS 会員・過去宿泊者へメールで実施。ブランド全体の推移を確認
年度末 統合分析 tNPSの改善がrNPSに反映されているかを検証し、翌年度の重点を決定

運用の注意点3つ

注意1:2つのスコアを混ぜて比較しない

tNPSは体験直後で感情が動いているため、rNPSより高く(または低く)出る傾向があります。tNPSはtNPSの推移、rNPSはrNPSの推移でそれぞれ追ってください。

注意2:質問文は一言一句変えない

「今回の体験を〜」「当社を〜」という核心の設問は、一度決めたら変えないでください。文言を変えると過去のデータと比較できなくなります。

注意3:スコアだけでなく「理由」を聞く

点数の後に「その点数をつけた理由をお聞かせください」という自由回答を必ず添えてください。改善のヒントはスコアではなく、この理由の中にあります。

よくある質問

Q. 小さな旅館でも両方やるべきですか?
いいえ、まずはtNPSだけで十分です。チェックアウト時の一言とQRコードから始められます。rNPSは顧客リストが整い、tNPSの運用が習慣になってからで遅くありません。

Q. tNPSはどの接点から始めればいいですか?
「クチコミが書かれるタイミングに一番近い接点」からがおすすめです。宿泊業ならチェックアウト直後です。

Q. スコアの目安はありますか?
業種や国によって大きく異なるため、絶対値より自社の推移を重視してください。日本では中間の点を選ぶ傾向があり、欧米より低く出やすいことも知っておくと安心です。詳しくはNPSの基礎解説記事をご覧ください。

まとめ:tNPSは「現場の体温計」、rNPSは「経営の健康診断」

  • tNPS=体験直後に聞く。接点の改善と批判者フォローに直結
  • rNPS=定期的に聞く。ブランド全体のファン度を定点観測
  • 迷ったらtNPSから。改善の積み重ねがrNPSを押し上げる
  • 2つのスコアは混ぜず、それぞれの推移で見る

2つの違いを押さえて設計すれば、NPSは「数字を眺めるだけの調査」から「翌日から動ける改善の仕組み」に変わります。


NPS調査の設計にお悩みの方へ
弊社では、tNPS・rNPSの設計から集計・改善活動の定着まで一気通貫でご支援しています。宿泊・観光業の実例をまじえたご提案が可能です。詳しくはコンサルティングメニューまたはお問い合わせからどうぞ。

※ネット・プロモーター®、ネット・プロモーター・システム®、NPS®は、ベイン・アンド・カンパニー、フレッド・ライクヘルド、NICE Systems, Inc.の登録商標またはサービスマークです。

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